ブログ
【取材記事】牧野記念庭園に行ってみよう!
2022年5月31日|カテゴリー:牧野記念庭園書斎再現プロジェクト
練馬みどりの葉っぴい基金で、今年4月に寄付の募集をスタートした「牧野記念庭園書斎再現プロジェクト」。牧野記念庭園学芸員の伊藤千恵さんに、庭園の見どころやプロジェクトについてお聞きしました。
「我が植物園」として大切にした庭
練馬区立牧野記念庭園は、「日本の植物分類学の父」と呼ばれ、練馬区の名誉区民でもある牧野富太郎博士が、大正15(1926)年から昭和32(1957)年に満94歳で亡くなるまでの30余年を過ごした自宅跡地を整備した庭園です。牧野博士が逝去された翌年の昭和33(1958)年に開園しました。
園内には、牧野博士が「我が植物園」として大切に育んだものなど300種類以上の植物と、博士が使っていた書屋や博士の生涯を紹介した記念館があります。
牧野記念庭園学芸員の伊藤千恵さん
庭の見どころは、ヘラノキ、サクラ‘センダイヤ’、キンモクセイなど、博士が発見・命名した植物です(一般的に使われていない学名や記載が見当たらない植物を含みます)。中でもスエコザサは支えてくれた妻・壽衛(すえ)への感謝を込めて命名した植物で、博士の胸像や顕彰碑・歌碑の周辺にあります。
スエコザサ
今年、生誕160年を記念して植樹された「ヒメアジサイ」も是非探したいところ。博士の出身地の高知県から、一株が練馬に“里帰り”し植えられました。澄んだ青の花をつけた優美な姿から、博士が「ヒメアジサイ」と名付けたそうです。花は6月初旬から青みが濃くなり、中旬に見頃を迎えます。
ヒメアジサイ
学芸員の伊藤さんによると、初夏にかけての庭の楽しみ方として、「新緑が美しい時期は、散策したり、外のベンチでゆったりしたりするのがオススメです。6月はヒメアジサイが青い花を、7月はヘラノキが小さな黄色い花を咲かせ、楽しませてくれます」とのこと。
庭園内に設置されているベンチ
区内では珍しい樹種のヘラノキは、「ねりまの名木」に指定されています
博士の生涯を知ることができる展示や特別展
常設展示室の様子
牧野博士の遺品や関連資料を展示する記念館は、博士が暮らしていた邸宅の跡地に建てられました。
記念館の常設展示室は、生い立ちから、植物学を志し高知県から上京した青年期、大泉で過ごした晩年の日々までをパネルで展示し、植物研究に生涯をささげた博士の歩みがわかるようになっています。
「ぜひ見てほしい!」と、伊藤さんが話すのが、手作りの印鑑。ひらがなの「の」がぐるぐると巻いた形の印鑑は、「巻きの」つまり「牧野」を表しているのだそうです。博士の、茶目っ気ある人柄がうかがえます。また、愛用の眼鏡をはじめ、植物を入れて持ち帰るための胴乱や剪定バサミ、顕微鏡、絵筆など、こだわりの道具も見どころです。
展示されている胴乱、剪定バサミ、顕微鏡など
隣の企画展示室では、牧野博士を描いたアート絵本『まきのまきのレター』の原画などを展示する特別展を開催しています。会場のモニターでは「花や草木に興味を持ってほしい」という博士の思いを受け、募集中のインスタグラムの投稿写真を紹介しています。会期は今年(令和4年)年6月19日まで。お見逃しなく!
企画展示室の様子
牧野富太郎生誕160年記念特別展「植物に彩られた我が人生―牧野富太郎を描いたアート絵本『まきのまきのレター』チラシ
『まきのまきのレター』の原画を手がけた佐々木香菜子さんによるライブペイントの作品も展示
生まれかわる博士の書斎
牧野博士が94年の生涯で収集した標本は約40万点、蔵書は約4万5千冊にものぼります。博士が大泉に引っ越してきたのは、関東大震災に遭遇し、安全な場所に家を建て、これらの貴重な標本や書籍を守りたいという妻の強い思いからだったそうです。
鞘堂の中にある書屋展示室は、博士が実際に使っていた最晩年の書斎です。建物の老朽化が進み、取り壊しの話が持ち上がったとき、博士を慕う人たちが、書斎だけは残したいと保全に尽力したそうです。練馬みどりの葉っぴい基金で寄付を募集している「牧野庭園書斎再現プロジェクト」では、博士が研究に没頭した当時の書斎の再現費用に寄付金を活用します。伊藤さんは次のように説明しています。
書斎にて(昭和25年4月2日撮影)個人蔵
現在展示されている書斎
「博士がお亡くなりになった後、膨大な本は高知県立牧野植物園へ、標本は東京都立大学が保管することになりました。足の踏み場もないほど蔵書が積み上げられた当時の書斎の様子は、写真を展示し説明しています。ただ、写真に気づかれない方も多く、いまの書斎を見て『こんなにきれいな、何もない状態で研究されていたんだ』という誤った印象を持たれてしまいます。当時の書斎にあった本を調べ、その様子を再現し、博士がどれほどの情熱をもって研究に打ち込んでいたのかをモノで体感できるようにしたいと思っています」
連続テレビ小説をPRする様子
生まれ変わった書斎は、来春公開予定とのこと。来春には、牧野博士が主人公のモデルとなる、NHK連続テレビ小説「らんまん」もスタートします。
主人公のモデルに決まったことを受け、来場者はぐんと増えたそうです。取材当日はあいにく小雨が降っていましたが、茨城から来たという80代の男性は「新聞で読んで、牧野先生のことやスエコザサのことを知り、こちらを訪れました」と話してくれました。
牧野博士を知っている人も、知らなかったという人も、博士をより身近に感じることができる牧野記念庭園に、ぜひ足を運んでみてください!
練馬区立牧野記念庭園
所在地:東京都練馬区東大泉6-34-4
開園時間:9時~17時
休園日:火曜(ただし祝日の場合は開園、次の平日が休館)
[練馬区立牧野記念庭園公式サイト]
※「練馬区立牧野記念庭園」は、無料でご来園いただけます。
※ご来園の際は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための対策にご協力をお願いいたします。
練馬のみどりを未来へつなぐための寄付を募集中!
寄付の使いみちは、複数のプロジェクトから選ぶことができます。練馬の魅力であるみどりを守り育て、次の世代に引き継ぐために、皆さまのご支援をよろしくお願いします!
くわしくは、こちらをご覧ください。